Kotlin/Wasm は、Kotlin のコードを WebAssembly(Wasm)へコンパイルして実行するための Kotlin Multiplatform のターゲットです。
WebAssembly は、ブラウザや Wasm ランタイム上で動作する低レベルのバイナリ命令形式で、C・C++・Rust など複数の言語からコンパイルして利用できます。
Kotlin/Wasm は、この WebAssembly を Kotlin の実行ターゲットとして利用できるようにした仕組みです。
これにより、Kotlin で書かれたコードを ブラウザや WebAssembly 対応環境で直接実行できるようになります。
Kotlin/Wasmの主な特徴
KotlinコードをWebAssemblyにコンパイルできる
Kotlin/Wasmでは、Kotlinのソースコードを WebAssemblyバイナリにコンパイルして実行します。
これにより、JavaScriptへ変換することなく、WebAssemblyとしてブラウザ上で動作させることが可能になります。
Kotlin Multiplatformの一部として利用できる
Kotlin/Wasmは Kotlin Multiplatform(KMP) のターゲットの一つです。
Kotlin Multiplatformでは、共通コードを複数のプラットフォームで共有できます。
代表的なターゲットは次の通りです。
- JVM(サーバー・Android)
- JavaScript
- Native(iOS・macOSなど)
- WebAssembly(Kotlin/Wasm)
この仕組みにより、アプリケーションのロジックやデータ処理などを 複数プラットフォームで共有する設計が可能になります。
Compose Multiplatformと組み合わせてWeb UIを作れる
Kotlin/Wasmは Compose Multiplatform と組み合わせることで、WebアプリケーションのUI開発に利用できます。
Compose Multiplatformは、JetBrainsが開発しているUIフレームワークで、以下のプラットフォームを対象としています。
- Android
- Desktop
- iOS
- Web
Web向けのComposeは、Kotlin/Wasmを使ってブラウザ上で動作するUIを構築できます。
ブラウザ以外のWasm環境でも動作可能
Kotlin/Wasmはブラウザ以外の環境でも実行できます。
具体的には、WASI(WebAssembly System Interface) を利用することで、Wasm対応ランタイム上で実行できます。
つまり、Kotlin/Wasmは
- ブラウザ
- WebAssemblyランタイム
の両方で動作させることができます。
Kotlin/Wasmの開発状況
Kotlin/Wasmは比較的新しい機能で、段階的に機能が追加されています。
主な流れは次の通りです。
- 2023年:Alpha版公開
- 2025年:Betaへ移行
Kotlin 2.2.20 では Kotlin/Wasm が Beta として扱われています。
また、この頃には次のような改善も行われています。
- JavaScript相互運用(JS interop)の改善
- npm依存管理の改善
- ブラウザデバッグの強化
jsとwasmJsの共有ソースセットの追加
これらは、実際のWebアプリ開発を行いやすくするための改善です。
Kotlin/JSとの違い
KotlinにはWeb向けのターゲットとして Kotlin/JS も存在します。
両者の違いを整理すると次のようになります。
| 項目 | Kotlin/Wasm | Kotlin/JS |
|---|---|---|
| コンパイル先 | WebAssembly | JavaScript |
| 実行方式 | Wasmランタイム | JavaScriptエンジン |
| JSライブラリ連携 | 制限あり | 直接利用しやすい |
| Kotlin Multiplatform | 対応 | 対応 |
Kotlin/JSはJavaScriptに変換されるため、既存のJavaScriptエコシステムとの統合が比較的容易です。
一方、Kotlin/WasmはWebAssemblyを利用するため、実行環境や相互運用の仕組みが異なります。
Kotlin/Wasmでできること
現在の主な用途は次のようなものです。
Webアプリケーション開発
Compose Multiplatformを利用して、ブラウザ上で動作するアプリケーションを構築できます。
マルチプラットフォームアプリ
Android・Desktop・iOS・Webで共通コードを共有するアプリケーションの構築が可能です。
Wasm環境でのアプリ実行
WASIを利用することで、WebAssemblyランタイムでアプリを実行できます。
Kotlin/Wasmのメリット
Kotlin/Wasmにはいくつかの利点があります。
KotlinのコードをWebで実行できる
Kotlinで書いたコードをWebAssemblyとして実行できるため、Kotlin中心の開発環境を維持しやすくなります。
Kotlin Multiplatformと相性が良い
共通ロジックを複数のプラットフォームで共有できます。
Compose Multiplatformと統合できる
UIフレームワークとしてComposeを利用できます。
Kotlin/Wasmの課題
Kotlin/Wasmはまだ発展途上の技術でもあります。
主な課題として挙げられるのは次の点です。
エコシステムの成熟度
JavaScriptのフロントエンドエコシステムと比較すると、ライブラリやツールはまだ発展途中です。
JavaScript連携
JavaScriptライブラリとの統合には、Kotlin/JSより制約がある場合があります。
技術の成熟度
Kotlin/WasmはまだBeta段階のため、今後仕様やツールが変化する可能性があります。
Kotlin/Wasmはどのような場面に向いているか
Kotlin/Wasmは、次のようなケースで検討されることが多い技術です。
- Kotlinを主要言語として使う開発チーム
- Kotlin Multiplatformで複数プラットフォームを開発する場合
- Compose Multiplatformを利用するUI開発
特に Kotlin中心のマルチプラットフォーム開発との相性が良い技術です。
まとめ
Kotlin/Wasmは、KotlinコードをWebAssemblyにコンパイルして実行するための技術です。
Kotlin Multiplatformのターゲットとして利用でき、Compose Multiplatformと組み合わせることでWebアプリケーション開発にも利用できます。
ただし、まだBeta段階の技術であり、エコシステムやツールは発展途中です。
そのため、利用する際にはプロジェクトの要件や開発体制を考慮して選択する必要があります。
以上、Kotlin/Wasmについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。










