SESエンジニア(システムエンジニアリングサービス)の1年目は、「エンジニアとしての基礎を身につける期間」であると同時に、「SESという働き方を理解する期間」でもあります。
特に未経験〜微経験で入社した場合、理想と現実のギャップに戸惑う人も少なくありません。
ここでは、よくある誤解を避けつつ、実態に即した形でSESエンジニア1年目を整理していきます。
SESエンジニア1年目の立ち位置
結論から言うと、多くの現場において1年目のSESエンジニアは即戦力としては扱われません。
ただし、これは「何も期待されていない」という意味ではありません。
現場側の前提は以下のようなケースが多いです。
- 基本的な作業は指示のもとで対応する
- 大きな判断は先輩やリーダーが行う
- まずは現場のルールや流れに慣れることを優先
なお、「即戦力」の定義は職種や現場によって異なります。
- 開発系:レビュー前提で小さな修正ができる
- インフラ系:手順書どおりに安定して作業できる
- 運用系:ミスなく定型業務を回せる
このように、1年目でも役割を果たせるケースはありますが、原則として育成・補助的な立場でスタートする人が多い、という理解が現実的です。
入社から現場参画までの一般的な流れ
入社後研修
研修の有無や内容は会社によって大きく異なります。
- 社内研修(数週間〜数か月)
- 外部研修への参加
- 研修は最小限で早期に現場参画
研修で扱われやすい内容としては、
- プログラミング基礎(Java / PHP / JavaScript など)
- SQLの基礎
- Linuxの基本操作
- Gitの使い方
- ビジネスマナー
などがあります。ただし、この段階で完璧に理解できる人はほとんどいません。
実務に触れて初めて「研修で習ったことの意味が分かる」ケースが大半です。
案件探し・待機期間
SESでは、研修後すぐに案件が決まらない場合、待機期間が発生することがあります。
- 営業が案件を探す
- クライアントとの面談を行う
- 条件が合えば現場参画
待機中の給与や扱いは雇用形態や会社のルールによって異なります。
- 正社員:給与が支払われるケースが多い
- 契約社員・業務委託:条件次第で変動する場合あり
- 手当の減額や研修扱いになることもある
そのため、「待機=安心」とも「待機=危険」とも一概には言えませんが、この期間を自主学習に使えるかどうかで、1年後の差が大きくなります。
1年目に多い仕事内容(現場の実態)
開発系SESの場合
1年目に任されやすい業務は以下のようなものです。
- テスト実施(単体・結合)
- テストデータの作成
- 既存コードの軽微な修正
- バグ調査・再現確認
- ドキュメント修正・追記
最初は、
- コードが読めない
- 専門用語が分からない
- システム全体像が見えない
と感じることがほとんどですが、これはごく普通の状態です。
インフラ系SESの場合
インフラ系では、以下のような業務から始まるケースが多く見られます。
- サーバーやネットワークの監視
- 障害発生時の一次対応(記録・エスカレーション)
- 手順書に沿った定型作業
- ログ確認・レポート作成
夜勤やシフト勤務が発生するかどうかは現場によりますが、監視・運用系の現場では夜勤が含まれる傾向がある点は理解しておく必要があります。
1年目に評価されやすいポイント
1年目のSESエンジニアに対して、現場が重視するのは高度な技術力よりも基礎的な姿勢であることが多いです。
特に見られやすいのは、
- 報告・連絡・相談ができるか
- 指示内容を正確に理解しようとする姿勢
- メモを取り、同じミスを繰り返さないか
- 分からないことを放置しないか
もちろん現場によっては技術スピードを求められる場合もありますが、1年目では「再現性」「安定感」「コミュニケーション」が評価に直結しやすいのが実情です。
1年目に感じやすい悩みや不安
SESエンジニア1年目では、多くの人が次のような不安を感じやすくなります。
- 自分はエンジニアに向いていないのでは
- 周囲のレベルが高く感じる
- 成長している実感がない
- SESという働き方に将来性があるのか
客先常駐という環境上、帰属意識が薄くなったり、比較対象が優秀な人ばかりになりやすいため、自己評価が下がりやすい構造があることも事実です。
1年目に意識しておきたい行動
現場理解を広げる意識を持つ
自分のタスクだけでなく、
- システムの目的
- 使用している技術構成
- チーム内の役割分担
を少しずつ理解することで、成長速度が上がります。
自主学習を習慣化する
内容は高度である必要はありません。
- 現場で使っている言語・ツール
- SQLやLinuxの基礎
- Gitの操作
- 設計書の読み方
短時間でも継続することが重要です。
キャリアを考え始める
1年目の後半には、
- この分野を続けたいか
- 開発/インフラのどちらが合うか
- 将来的にどんな働き方をしたいか
といったことを、ぼんやりでも考え始めるとよいでしょう。
SESは通過点にする人も多い一方で、分野特化や上流工程で長期的なキャリアを築く人もいます。
重要なのは「市場価値が積み上がる経験ができているか」です。
1年目を乗り切る人に共通する特徴
- 分からないことをそのままにしない
- メモを取り、次に活かす
- 質問時に状況や試したことを整理できる
- 現場の人間関係を大切にする
- 自主的に学ぶ姿勢がある
逆に、受け身になりすぎると成長実感を得にくくなります。
1年目終了時の現実的な到達点
1年目の終わりに目指すべき状態は、
- 一連の作業を大きなフォローなしでこなせる
- 専門用語や現場の流れに慣れている
- 小さなタスクを任されるようになる
- 次のキャリアを考え始めている
「何でもできる」必要はありません。
エンジニアとしての土台ができていれば十分です。
まとめ
SESエンジニア1年目は、技術だけでなく、働き方・姿勢・環境への適応力を身につける期間です。
焦らず、腐らず、地道に積み上げた経験は、2年目以降に確実に選択肢として返ってきます。
以上、SESエンジニアの1年目についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。










