SESの善管注意義務について

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SES(システムエンジニアリングサービス)においてよく話題になる「善管注意義務」は、責任範囲やトラブル時の判断基準を理解するうえで非常に重要な概念です。

とくにSESは請負契約と混同されやすく、善管注意義務の意味を誤解したまま現場に入ると、不利な立場に置かれることも少なくありません。

本記事では、善管注意義務の法的な位置づけから、SES特有の注意点、実務で問題になりやすいポイントまでを、正確性を重視して整理します。

目次

善管注意義務の基本的な意味

善管注意義務とは「善良な管理者の注意義務」の略称で、業務を引き受けた者が、その立場の専門家として通常期待される注意をもって業務を遂行すべき義務を指します。

民法では、委任契約に関して次のように定められています。

受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う(民法644条)

SESで一般的に用いられる「準委任契約」は、民法656条により委任に関する規定が準用されるため、準委任であるSESにおいても善管注意義務が適用されることになります。

重要なのは、善管注意義務が「結果を保証する義務」ではなく、「合理的な注意を尽くす義務」である点です。

SES契約における善管注意義務の位置づけ

SESは原則として準委任契約

SES契約の多くは準委任契約であり、その特徴は次の通りです。

  • 業務の遂行自体が契約の目的
  • 成果物の完成を必ずしも前提としない
  • 評価対象は「行為・プロセス」

請負契約のように「成果物の完成」や「契約不適合責任」が中心になる契約形態とは、責任の考え方が異なります。

そのためSESでは、成果が期待通りでなかったこと自体が、直ちに契約違反になるわけではありません。

ただし注意すべき「成果合意型の準委任」

実務上、SESであっても次のような合意が含まれることがあります。

  • 設計書や実装コードの作成
  • テスト結果の提出
  • チケット消化やレビュー対応

このようなケースでは、請負契約ほどの「完成責任」は負わないものの、合意した作業内容については履行義務が生じるため、「結果は一切問われない」と考えるのは危険です。

あくまで、

  • 準委任:合理的努力義務が中心
  • 請負:完成責任が中心

という違いを理解しておく必要があります。

善管注意義務で求められる具体的な行動(SES実務)

SESにおける善管注意義務は抽象的ですが、実務では次のような行動として現れます。

スキル水準に応じた適切な業務遂行

  • 明らかに不適切な設計・実装をしない
  • 分からない点を放置せず、調査・相談を行う

明白な問題点の放置をしない

  • 設計上の欠陥
  • セキュリティリスク
  • 運用上の重大な懸念点

これらに気づいた場合、報告・共有・注意喚起を行うことが善管注意義務の一部とされます。

報連相と判断プロセスの明確化

  • 進捗や問題点を適切に共有する
  • 独断で重要な判断をしない
  • 判断根拠を文面で残す

業務範囲・権限の逸脱を避ける

  • 契約外業務を独自判断で引き受けない
  • 権限のない操作を行わない

善管注意義務違反と判断されやすいケース

実務で問題になりやすい例として、次のようなケースがあります。

  • 明らかな不具合やリスクに気づいていたにもかかわらず、報告しなかった
  • スキル不足を認識しながら、自己流で対応し障害を発生させた
  • 顧客のためになると考え、無断で仕様変更を行った

とくに「結果が良かったかどうか」ではなく、判断時点で合理的な注意を尽くしていたかが評価される点が重要です。

指示通りに作業していれば責任はないのか

よくある誤解として、「指示通りに作業していれば責任はない」という考えがありますが、これは正確ではありません。

  • 明白に危険・不合理・違法性が高いと認識できる指示を、そのまま実行した場合
    → 善管注意義務違反と判断される可能性あり

一方で、

  • 専門的判断が分かれる領域
  • 合理的な選択肢が複数存在するケース

では、直ちに義務違反になるとは限りません。

「誰が見ても明らかに問題があるかどうか」が判断の分かれ目になります。

責任主体は誰になるのか

原則として、SES契約上の責任主体は契約当事者であるSES企業です。

そのため、通常は企業が前面に立って対応します。

ただし例外として、

  • 故意または重過失
  • 不法行為(重大な情報漏えい等)

が認められる場合には、個人の責任が問題となる余地も理論上は存在します。

そのため、重大な判断ほど、記録を残し合意を明確にすることが重要です。

SESエンジニアが善管注意義務を意識して自分を守るために

  • 曖昧な指示は必ず言語化して確認する
  • リスクや懸念点は文面で共有する
  • 契約上の業務範囲を最低限把握する
  • 判断の経緯をチャットや議事録に残す

これらはすべて、善管注意義務を果たしていることを示す重要な要素になります。

まとめ

SESにおける善管注意義務とは、

  • 成果を保証する義務ではない
  • プロとして合理的な注意を尽くす義務である
  • 問題に気づいた際の「報告・共有・説明」が極めて重要

という点に集約されます。

SESでは技術力だけでなく、判断の透明性と記録の積み重ねが、自身を守る最大の武器になります。

以上、SESの善管注意義務についてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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