「SESは給料が高い」「SESは搾取される」この2つの意見が同時に語られることが多いのが、SES(システムエンジニアリングサービス)という働き方です。
結論から言うと、SESだから給料が高い/低いと一概に決めることはできません。
SESの年収は、会社・商流・単価・還元制度・担当工程によって大きく振れます。
本記事では、
- 公的統計
- 業界統計
- 転職市場データ
- SESのビジネス構造
を整理したうえで、「SESの給料は本当に高いのか?」を冷静に解説します。
日本全体・IT業界の平均年収を確認する
まず比較の基準として、全体の平均を押さえます。
- 日本の給与所得者の平均給与:約460万円
(国税庁「民間給与実態統計調査」)
これは業種・職種をすべて含んだ平均値です。
IT業界については、公的統計や業界団体(JISAなど)の調査を見ると、企業規模・年齢・職種による差が非常に大きいことが分かります。
この時点で重要なのは、
「IT業界=高給」「SE=高給」
と単純化できるほど、実態は均一ではないという点です。
SESの給料が「高く見える」理由
SESが高給だと言われる背景には、ビジネスモデルの見え方があります。
SESでは、エンジニアの稼働が
- 月額単価
- 精算幅(稼働時間)
といった形で取引されることが多く、「自分がいくらで売られているか」が意識されやすい構造になっています。
このため、
- 月単価70万、80万といった数字を聞く
- 「それなら年収1,000万近いのでは?」と想像する
というギャップが生まれやすいのです。
しかし、ここには重要な前提があります。
SESの給料を決める3つの要素
SESの年収は、主に次の3点で左右されます。
案件単価
要件定義・設計・PMなど上流工程ほど単価は高く、テスト・運用・監視などは単価が低くなりやすい傾向があります。
これは業界全体で広く共有されている一般論です。
還元の仕組み(還元率)
単価のうち、
- どこまでが給与原資になるのか
- 賞与・社会保険・待機リスクをどう扱うのか
は会社ごとに大きく異なります。
「高還元SES」を掲げる企業もありますが、還元率の定義が曖昧なケースも多いため注意が必要です。
商流(元請けとの距離)
元請け・エンドに近いほど、中間マージンが少なくなり、給与に反映しやすくなる傾向があります。
ただし、
商流が深い=必ず低年収
ではありません。
元の単価や役割次第で十分カバーされるケースもあります。
データ上、SESの年収は高いのか?
転職市場のデータでは、SESエンジニアの平均年収が、ITエンジニア全体より低めに出るケースがあります。
ただし、ここで重要なのは、
- これは「特定の転職サービス経由の内定者データ」である
- 日本のSES全体を代表する公的統計ではない
という点です。
つまり、
- 「少なくとも一部の転職市場ではSESの平均年収が低めに出ている」
- 「しかしSES全体の平均年収を断定する材料にはならない」
というのが、正確な読み取りになります。
なぜSESは「高い」とも「低い」とも言われるのか
SESの評価が割れる最大の理由は、振れ幅の大きさです。
年収が上がりやすいSESの特徴
- 上流工程(要件定義・設計・PM・PMO)に関わる
- クラウド・セキュリティ・SREなど単価が高い領域
- 商流が浅い案件
- 単価・評価・昇給ロジックが透明
この条件が揃うと、SESでも高年収は十分に現実的です。
年収が伸びにくいSESの特徴
- 工程が固定され、単価が上がらない
- 単価非開示で評価基準が曖昧
- 商流が深く、役割も限定的
- 待機時の給与条件が不安定
この場合、「SES=給料が低い」という印象を持ちやすくなります。
結論:SESの給料は「構造理解なしに語れない」
改めて結論をまとめます。
- SESという働き方そのものが高給を保証するわけではない
- 一方で、条件次第では高年収も十分に狙える
- 平均だけでSESを評価するのは不正確
重要なのは、「SESかどうか」ではなく、どの会社で、どの商流で、どの役割を担っているかです。
SESを選ぶ際に確認すべきポイント
- 単価は開示されるか(最低でもレンジ)
- 還元の考え方(給与・賞与・待機時の扱い)
- 商流(一次請け比率、エンド直の有無)
- 昇給ロジック(単価連動か、社内評価か)
- スキルアップにつながる工程か
これらを把握せずに「SESは高い/低い」と判断すると、現実とのズレが生まれやすくなります。
以上、SESの給料は本当に高いのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。










