「IT企業の9割はSES事業をやっている」日本のIT業界について調べていると、このような表現を目にすることがあります。
結論から言うと、この言葉は統計的に厳密な数字を示したものではありません。
ただし、日本のIT業界において SES(システムエンジニアリングサービス)が非常に一般的なビジネスモデルである ことは事実です。
本記事では、
- SESとは何か
- なぜ日本でSESがここまで普及したのか
- 「IT企業の9割がSES」と言われる背景
- よくある誤解と注意点
について、業界構造を踏まえて解説します。
SES(システムエンジニアリングサービス)とは
SES(System Engineering Service)とは、IT企業が自社に所属するエンジニアの技術力を、契約に基づいてクライアント企業へ提供する事業形態を指します。
多くの場合、SESは以下の特徴を持ちます。
- 契約形態は準委任契約などが中心
- 成果物の完成責任ではなく、業務遂行そのものに対して対価が支払われる
- エンジニアはクライアント先(いわゆる客先)で業務を行うケースが多い
なお、指揮命令権は原則としてエンジニアが所属する会社側にあります。
ただし実務の現場では、クライアントと日常的にやり取りをしながら業務を進めるため、
客先常駐=クライアントの指示で動く、という印象を持たれやすいのが実情です。
この点は、労働者派遣との違いとして混同されやすい部分でもあります。
なぜSES事業は日本でこれほど普及したのか
慢性的なITエンジニア不足
日本では長年にわたり、ITエンジニアの不足が続いています。
- DX推進
- 既存システムの保守・刷新
- クラウド、セキュリティ、データ活用分野の拡大
こうした需要に対して、企業が必要な人材をすべて自社採用でまかなうのは現実的に難しい状況があります。
SESは、必要なタイミングで、必要なスキルを持つエンジニアを確保できる手段として定着しました。
プロジェクト単位での柔軟なリソース調達
IT開発はプロジェクトごとに人員需要が大きく変動します。
- 立ち上げ期・ピーク時だけ人手が必要
- 特定の技術領域(例:クラウド移行、基幹刷新)だけ専門人材が必要
- プロジェクト終了後は人員が余剰になる
こうした特性から、固定費として正社員を抱えるリスクを抑えたい企業にとって、SESは非常に使い勝手の良い仕組みとなりました。
コストを「変動費」として管理しやすい
SESでは一般的に、
- 稼働時間 × 単価
という形で費用が発生します。
そのため企業側は、
- 採用・教育・待機リスクを負わずに済む
- プロジェクト単位で予算を組みやすい
- 必要なくなれば契約を終了できる
といったメリットを得られます。
「SES=安い」という単純な話ではありませんが、コストを固定費ではなく変動費として扱える点が、多くの企業に選ばれてきた理由です。
なぜ「IT企業の多くがSESをやっている」と言われるのか
SES事業は、ITビジネスの中でも
- 比較的参入障壁が低い
- 案件を獲得できれば売上を立てやすい
- 景気変動に合わせて事業規模を調整しやすい
という特徴を持っています。
そのため特に、
- 中小規模のIT企業
- 創業間もない企業
- 受託開発だけでは人員調整が難しい企業
にとって、SESは現実的かつ選びやすいビジネスモデルとなっています。
このような背景から、
「日本のIT企業の多くは、何らかの形でSESに関わっている」
という印象が業界内外に広まり、それが誇張されて「9割」という表現につながっていると考えられます。
すべてのIT企業がSES中心というわけではない
重要なのは、SESが一般的だからといって、すべてのIT企業がSES専業というわけではない点です。
実際には、
- 自社プロダクトやSaaSを開発する企業
- 受託開発(請負)を中心とする企業
- SESと自社サービスを組み合わせている企業
など、ビジネスモデルは多様です。
また、SESを入口として事業を安定させ、その後に自社サービスへ展開する企業も少なくありません。
「IT企業の9割はSES事業なのか?」の結論
- 「9割」という数字に、厳密な統計的根拠があるわけではない
- ただし、日本のIT業界においてSESが非常に広く普及しているのは事実
- 技術者不足・プロジェクト型ビジネス・コスト構造がSES拡大を後押ししてきた
- SESはあくまで数あるビジネスモデルの一つであり、企業戦略によって位置づけは異なる
つまり、
「IT企業の9割がSES」というのは正確な数字ではないが、 SESが日本のIT業界で極めて一般的な存在であることを示す表現として使われている
と理解するのが適切でしょう。
まとめ
SES事業は、日本のIT業界の構造や歴史、労働市場の事情から生まれ、定着してきたビジネスモデルです。
その重要性や評価は立場によって異なりますが、業界を理解するうえで避けて通れない存在であることは間違いありません。
以上、IT企業の9割はSES事業なのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。










