SES協業の概要
SES協業とは、システムエンジニアリングサービス(SES)契約を前提として、複数の企業が連携し、人材・案件・技術領域を相互に補完し合うビジネス形態を指します。
IT業界、とくに日本では
- エンジニア不足
- 案件の高度化・多様化
- 企業規模による営業力・人材力の偏り
といった構造的課題があり、単独企業だけでは案件を完結させにくい状況が常態化しています。
その解決策として発展してきたのがSES協業です。
一言で表すなら、
「SESを軸にした企業間パートナーシップ」
と言えるでしょう。
そもそもSESとは何か(前提整理)
SES(System Engineering Service)とは、主に準委任契約を用いて、
- エンジニアが
- 顧客先または顧客指定の現場に常駐し
- システム開発・運用・保守などの業務を
- 成果物の完成責任ではなく、業務遂行(役務提供)として提供する
契約形態を指します。
SESの重要な特徴
- 請負契約のように「完成責任」を負わない
- 労働者派遣のように「派遣先の雇用上の指揮命令」を受けない
- 契約範囲に基づく業務依頼・調整は発生する
この「派遣との違い」は、後述する偽装請負リスクとも深く関係します。
SES協業が生まれた背景
SES協業が広がった背景には、以下の業界構造があります。
慢性的なエンジニア不足
- 案件はあるが人が足りない
- 特定技術(クラウド、フロントエンド、AIなど)が不足
案件の高度化・複合化
- 単一スキルでは対応できない案件増加
- フロント/バック/インフラ/クラウドの分業化
企業ごとの強みの偏り
- 営業力はあるが人材がいない会社
- 技術者は多いが案件が取れない会社
これらの「歪み」を解消するために、企業同士が横につながり、リソースを融通する仕組みとしてSES協業が発展しました。
SES協業の代表的な形態
SES協業には、実務上よく見られるいくつかのパターンがあります。
パターン①:案件提供型協業
- A社:元請・一次請として案件を保有
- B社:エンジニアを保有
B社のエンジニアがA社案件にSES参画する形です。
パターン②:人材補完型協業
- A社:アプリ開発が強い
- B社:インフラ・クラウドが強い
互いの得意分野を持ち寄り、チームとして案件に参画します。
パターン③:営業連携型協業
- 空き要員情報
- 新規案件情報
を定期的に共有し、長期的なパートナー関係を構築します。
パターン④:多重構造型(注意が必要)
- 元請 → 一次 → 二次 → 三次
構造が深くなるほど、
- 単価の圧縮
- 責任所在の不明確化
といった問題が起きやすく、健全な協業とは言いづらいケースもあります。
SES協業のメリット
企業側のメリット
① 機会損失を防げる
人材不足で断っていた案件への対応が可能。
② 稼働率の安定
待機エンジニアを減らし、経営を安定させられる。
③ 強みの最大化
営業特化・技術特化など役割分担が可能。
④ 営業コストの削減
案件・人材探索の効率が上がる。
エンジニア側のメリット
- 案件選択肢が増える
- 新しい技術・現場経験を積める
- 長期参画につながりやすい
協業がうまく機能すれば、エンジニアのキャリア形成にもプラスになります。
SES協業における注意点・リスク
責任の所在を明確にする
トラブル時に
- 誰が顧客対応するのか
- 誰がエンジニア管理を行うのか
を事前に決めておく必要があります。
単価・条件の不透明化
多重構造では、エンジニア単価が不当に圧縮されるリスクがあります。
情報管理リスク
人材情報・条件情報はNDA前提で扱う必要があります。
偽装請負リスク
契約はSES(準委任)でも、実態が
- 派遣先による直接的な指揮命令
- 勤怠・評価・業務指示の一体管理
になっている場合、偽装請負や違法派遣と判断される可能性があります。
派遣・SES・請負の違い
| 区分 | 雇用関係 | 指揮命令 |
|---|---|---|
| 労働者派遣 | 派遣元 | 派遣先 |
| SES(準委任) | SES企業 | SES企業(※派遣先の雇用上の指揮命令はなし) |
| 請負 | 請負会社 | 請負会社 |
※SESでは、契約範囲での業務依頼・調整は行われますが、派遣のような雇用関係に基づく指揮命令は前提としません。
SES協業が向いている企業
- 小〜中規模SES企業
- スタートアップSIer
- 特定技術に強みを持つ企業
- エンジニア待機を減らしたい企業
逆に、完全内製志向や受託オンリーの企業には不向きです。
SES協業を成功させるポイント
- 協業先の信頼性を見極める
- 契約条件・単価を明確にする
- 長期的なパートナー関係を前提にする
- エンジニアを“駒”として扱わない
SES協業は短期的な人貸しではなく、信頼を積み上げるビジネスモデルとして設計することが重要です。
まとめ
- SES協業とは、SES契約を前提にした企業間連携
- 人材・案件・技術の不足を相互補完する仕組み
- メリットは大きいが、契約・運用を誤るとリスクも高い
正しく理解し、適切に運用すれば、SES協業は企業・エンジニア双方にとって価値の高い選択肢になります。
以上、SES協業とはなにかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。










