SES（システムエンジニアリングサービス）とは、主に準委任契約などを通じて、企業がITシステムの開発や運用に必要なエンジニアの技術支援（稼働）を外部から確保する契約形態を指します。
受託開発（請負契約）のように成果物の完成責任を前提とする形態とは異なり、SESでは一定期間・一定範囲の作業提供そのものが契約の中心となる点が特徴です。
そのため、エンジニアはクライアントのプロジェクトに参画し、チームの一員として業務を遂行するケースが多く見られます。
SESを活用することで企業は、
- 採用にかかる時間やコストを抑えながら
- 必要なスキルを持つ人材を柔軟に確保し
- プロジェクトの規模やフェーズに応じて体制を調整できる
といったメリットを得ることができます。
このような背景から、SESは現在のIT業界において、人材戦略およびプロジェクト推進の両面で欠かせない存在となっています。
SESでのプロジェクトマネージャーの重要な役割
SESの現場において、プロジェクトマネージャー（以下、PM）は極めて重要な役割を担います。
ただし注意すべき点として、SESにおけるPMの役割は、その立場（クライアント側／受託側／SES企業側）によって異なるという前提があります。
特にSES企業側のPMは、プロジェクト全体の最終責任者というよりも、現場が円滑に機能するための調整役・推進役としての役割を担うケースが一般的です。
その主な業務内容は、以下のように整理できます。
プロジェクト計画の把握・実行支援
プロジェクトの目的やスコープ、体制、スケジュールを正確に理解し、それに基づいて適切なエンジニア配置や稼働調整を行います。
クライアント側が策定した計画を前提としつつ、実行段階での課題やギャップを早期に察知し、関係者と連携して対応することが求められます。
リスク管理
SES特有のリスクとしては、以下のようなものが挙げられます。
- スキルや期待値のミスマッチ
- 稼働過多・役割の曖昧化
- 契約範囲を超えた業務依頼
- ナレッジ共有や引き継ぎ不足
PMはこれらのリスクを事前に把握し、問題が顕在化する前に調整・是正・エスカレーションを行うことが重要です。
チームおよび関係者間の調整
SESエンジニア同士の連携だけでなく、クライアント、他ベンダー、情シス部門、場合によってはセキュリティや法務部門との調整も発生します。
PMには、立場や利害の異なる関係者の間に立ち、認識を揃えながら合意形成を進める力が求められます。
進捗の可視化とフォロー
プロジェクトの進捗状況を定期的に確認し、遅延や問題の兆候があれば速やかに共有します。
必要に応じて、スケジュールや体制の見直しについて関係者に提案し、合意のもとで調整を行うこともPMの重要な役割です。
クライアント対応・期待値調整
クライアントとのコミュニケーションにおいては、単に要望を受け取るだけでなく、
- 実現可能性
- 優先順位
- 契約範囲との整合性
を踏まえた期待値調整が欠かせません。
この調整が適切に行われることで、トラブルや認識齟齬を未然に防ぐことができます。
プロジェクトの成功に影響を与えるPMの資質
SESプロジェクトマネージャーの力量は、プロジェクトの成否に大きく影響します。
特に重要とされる要素は次の3点です。
技術的理解力
PM自身が一定レベルの技術知識を持っていることで、エンジニアとのコミュニケーションが円滑になり、課題の本質を正確に把握できます。
すべてを実装できる必要はありませんが、技術的な背景を理解したうえで判断できる力は不可欠です。
コミュニケーション能力
SESの現場では、立場・契約・責任範囲の異なる人々が関わります。
その中でPMには、情報を整理し、わかりやすく伝え、相互理解を促進するコミュニケーション能力が強く求められます。
リーダーシップと冷静な判断力
PMは必ずしも直接的な指揮命令権を持つとは限りませんが、信頼をベースにチームをまとめ、困難な状況でも冷静に判断する姿勢がプロジェクトの安定につながります。
SESプロジェクトマネージャーになるための道のり
SESプロジェクトマネージャーを目指すうえで、一般的に以下のステップが有効とされています。
技術的バックグラウンドの習得
まずは、システムエンジニアやプログラマーとしての実務経験を通じて、開発・運用の現場を理解することが重要です。
この経験が、PMとしての判断力や現場理解の土台となります。
プロジェクトマネジメントスキルの習得
次に、プロジェクトマネジメントに関する体系的な知識を身につけます。
PMP（Project Management Professional）をはじめ、IPAのプロジェクトマネージャ試験などの資格は、知識の整理やキャリア形成に役立ちます。
実務経験の積み重ね
最終的に重要なのは実務経験です。
小規模案件での進行管理や調整業務を経験しながら、徐々に規模や責任範囲を広げていくことで、実践的なPMスキルが磨かれていきます。
まとめ
SESプロジェクトマネージャーは、SESという契約形態の特性を理解したうえで、人・契約・技術・期待値を調整し、プロジェクトを円滑に前進させる重要な存在です。
技術的知識に加え、高いコミュニケーション能力とバランス感覚のあるリーダーシップが求められるため、決して簡単な役割ではありません。
しかし、その分、プロジェクト成功への影響力は非常に大きいと言えるでしょう。
これからSESプロジェクトマネージャーを目指す方は、幅広い視点でスキルと経験を積み重ねていくことが重要です。
以上、SESでのプロジェクトマネージャーの役割と重要性についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
