SES(システムエンジニアリングサービス)を語るうえで、必ず出てくる言葉が「商流」です。
この商流を正しく理解しているかどうかで、年収・案件内容・キャリアの伸び・トラブル耐性まで大きく変わります。
一方で、商流は曖昧に説明されがちで、「SESは全部ブラック」「多重下請けは違法」など、誤解も多い分野です。
この記事では、法律・実務・現場感覚の3点を踏まえた“正確な商流理解”を目的に、基礎から丁寧に解説します。
SESにおける「商流」とは何か
SESの商流とは、簡単に言えば、
エンジニアの労働力(役務)が、エンドユーザー企業に届くまでの取引経路
を指します。
SESでは、エンジニアはエンドユーザー企業に直接雇用されているわけではありません。
自社(SES企業)に雇用されたまま、他社のプロジェクト現場で業務を行うのが一般的です。
その際に、
- どの会社とどの会社が契約しているのか
- 何社の企業を経由しているのか
この契約と発注の流れ全体をまとめて「商流」と呼びます。
商流の基本構造
代表的な商流は次のような形です。
エンドユーザー企業
↓
元請け企業(一次請け)
↓
二次請け企業
↓
三次請け企業
↓
SES企業(あなたの会社)
↓
エンジニア
このとき、
- 何次請けか
- 何社挟まっているか
が商流の「浅い」「深い」を判断する基準になります。
商流に登場する企業の役割
エンドユーザー企業
- 実際にシステムを利用する会社
- 例:金融機関、メーカー、EC事業者、官公庁など
- 予算を持ち、プロジェクトの最終責任を負う
元請け企業(一次請け)
- エンドユーザーと直接契約
- 要件定義、基本設計、全体管理を担うことが多い
- 単価・裁量・発言力が最も大きい立場
二次請け・三次請け
- 元請けから業務を受託
- 実装、テスト、運用などを分担
- 下流になるほど契約条件や裁量は限定されやすい
SES企業
- エンジニアを雇用し、現場に常駐させる
- 給与の支払い、労務管理、キャリア支援を担う
商流が深くなると起きやすいこと
単価構造が見えにくくなる
商流が深くなるほど、中間に入る企業が増えます。
その結果、
- 契約金額
- 各社の役割
- マージンの内訳
がエンジニアから見えにくくなります。
一般論として、中間企業が増えれば各社の取り分が積み重なるため、末端に届く原資が小さくなる傾向はありますが、これはあくまで構造上の傾向であり、必ずしも「深い=搾取」とは限りません。
情報伝達が複雑になりやすい
商流が深いと、
- 仕様変更が伝わるのが遅い
- 認識のズレが起きやすい
- 誰が最終判断者なのか分かりにくい
といった問題が起こりやすくなります。
キャリア形成に影響が出る場合がある
案件によっては、
- 上流工程は元請けが独占
- 下流は実装・テスト固定
という切り分けがされていることもあります。
その場合、商流の下流にいると設計や要件定義に関わる機会が少なくなりやすいのは事実です。
ただし、これはあくまで「そうなりやすい案件が多い」という話で、すべての案件に当てはまるわけではありません。
商流が浅いSESの特徴
一般的に、商流が浅い(エンドに近い)SES案件には次の傾向があります。
- エンジニア単価が比較的高い
- 仕事内容の説明と実態が一致しやすい
- エンドユーザーと直接会話できる機会がある
- 技術的な裁量が大きい場合が多い
特に、
エンドユーザー企業
↓
SES企業
↓
エンジニア
という構造は、商流が非常にシンプルな理想形とされます。
商流と契約形態の正しい理解(重要)
SESと派遣は同じではない
SESは多くの場合、
- 準委任契約
- または請負契約
として扱われます。
一方、労働者派遣契約では、
- 雇用関係:派遣元企業
- 指揮命令:派遣先企業
という関係になります。
派遣先と労働者の間に雇用関係が生じることはありません。
偽装請負が問題になるケース
SES(準委任・請負)であっても、
- 勤怠を現場が直接管理している
- 作業手順・優先順位を細かく直接指示している
- 配置転換や評価を現場が行っている
といった実態が派遣に近い状態になると、偽装請負などの法的問題が指摘される可能性があります。
ただし、
- 品質確保のための指示
- 進捗確認や情報共有
- 成果物に対するレビュー
など、契約の範囲内で許容される指示・連携もあります。
重要なのは、誰が業務全体を管理・統括しているかです。
「商流が深い=違法」ではない
ここは特に誤解が多い点ですが、
- 商流が深いこと自体は違法ではありません
- 多重下請けそのものも直ちに違法ではありません
問題になるのは、
- 契約内容と実態が一致していない
- 指揮命令系統が不透明
- 責任の所在が曖昧
といった運用面の不整合です。
商流を見極めるための実践的な質問
SES企業や案件を検討する際は、次の点を確認すると実態が見えやすくなります。
聞いておきたい質問
- エンドユーザーはどの業界・どの規模か
- 御社は何次請けの立場か
- 商流上、何社が間に入っているか
- 契約形態は準委任か派遣か
- 現場での指揮命令は誰が行うのか
※単価やマージンは守秘義務で非開示の場合もありますが、商流の社数や立ち位置は説明できるのが健全な企業です。
まとめ:SESの商流は「理解して選ぶ」もの
SESの商流は、単なる業界用語ではなく、働き方と将来を左右する構造そのものです。
- 商流が浅い=絶対に良い
- 商流が深い=必ず悪い
ではありません。
大切なのは、
- 商流を把握したうえで納得して選んでいるか
- 契約と実態が一致しているか
- キャリアの方向性と案件内容が合っているか
この3点です。
SESは仕組みを理解すれば、リスクを抑えながら経験を積める選択肢にもなります。
以上、SESの商流についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。










