SES(システムエンジニアリングサービス)で働くエンジニアの中には、
- 「契約期間中に辞めたら違約金が発生するのでは?」
- 「クライアントとの契約を破ることにならないか?」
- 「途中退職は法律的に問題ないのか?」
といった不安を抱える方が少なくありません。
結論から言うと、SESの契約期間中であっても退職は可能なケースが大半です。
ただし、雇用形態(無期/有期)や退職の進め方によって注意点が異なります。
以下では、法律と実務の両面から、正確に解説します。
SESにおける「契約期間」の正体
SES契約は「会社と会社」の契約
SESでよく誤解される点ですが、クライアントと結んでいる契約は、
- SES企業(あなたの勤務先)
- クライアント企業
この2社間の業務委託(多くは準委任)契約です。
エンジニア本人は、このSES契約の当事者ではありません
あなたが直接クライアントと「◯か月働く」と約束しているわけではない、という点が重要です。
契約期間中でも退職できるのか?
結論:原則として可能
ただし、判断基準は「SES契約」ではなく、あなたとSES会社との雇用契約の種類です。
正社員(無期雇用)の場合
- 民法上、退職の意思表示から2週間で雇用契約は終了します
- 就業規則に「1か月前申告」などがあっても、
それだけを理由に退職を無効にすることはできません
SESの契約期間が残っていても、退職そのものは可能
契約社員(有期雇用)の場合
ここは特に注意が必要です。
原則
- 契約期間中は、途中退職に一定の制約があります
重要な例外①:契約開始から1年以上経過している場合
- 1年を超える有期契約では、
契約開始から1年を経過すれば、労働者は退職を申し出ることができます
重要な例外②:やむを得ない事由がある場合
たとえば、
- 心身の不調
- ハラスメント
- 労働条件の重大な相違
- 継続就労が困難な家庭事情
これらがあれば、契約期間途中でも退職が認められる可能性が高いです。
「有期だから絶対に辞められない」という理解は誤りです。
契約期間中に退職した場合、実際に起こること
SES企業側の対応
あなたが退職すると、SES企業は以下の対応を迫られます。
- クライアントへの説明・謝罪
- 契約条件の見直し、または途中解約
- 代替要員の手配
そのため、
- 引き止め
- 「契約期間だから無理だ」という説明
- 精神的なプレッシャー
がかかることは現実としてあります。
ただし、退職の意思表示そのものを妨害する行為は問題視される可能性があります。
クライアント(常駐先)の反応
多くの場合、
- 引き継ぎ
- スケジュール調整
が行われ、「残念だが仕方ない」という対応になります。
クライアントがエンジニア個人に直接、損害賠償を請求するケースは極めて稀です
(契約当事者ではないため)
違約金・損害賠償は発生するのか?
違約金について
- 「途中退職したら◯万円支払う」といった違約金条項は原則無効
- 労働基準法では、退職を理由にした賠償額の事前取り決めは禁止されています
損害賠償について
- 法律上、あらかじめ金額を決めることは不可
- ただし、
- 故意による業務妨害
- 極端な無断欠勤
- 明白な重大過失
など、例外的に実損が発生し、法的責任が認められる場合は、別途争いになる余地はあります。
通常の退職(事前申告・引き継ぎあり)で問題になることはほぼありません
即日退職はできるのか?
ここは誤解されやすい点です。
- 無期雇用の原則は「2週間」
- 即日退職は原則ではありません
ただし、
- 会社が合意する(合意退職)
- 病気などで就労が困難
といった例外的な事情があれば、実務上即日扱いになることはあります。
「誰でも即日辞められる」という理解は正確ではありません。
トラブルになりやすいケース
- 契約社員で、1年未満・理由説明が弱い
- 無断欠勤や突然のバックレ
- 引き継ぎを一切しない
- 感情的な退職理由のみを伝える
これらは、会社との摩擦を大きくします。
円満に退職するための実務ポイント
早めに意思表示する(1〜2か月前が理想)
退職理由は客観的・正当なものに整理
- キャリアの方向性
- 体調・生活事情
- スキルアップの限界
引き継ぎの姿勢を最後まで示す
- ドキュメント作成
- 口頭説明
これだけで、法的リスク・実務トラブルの両方が大きく下がります。
まとめ
- SES契約は会社間の契約
- 判断基準は「あなたの雇用契約」
- 無期雇用は原則2週間
- 有期雇用でも条件次第で途中退職可能
- 違約金は原則無効
- 実務では配慮と段取りが極めて重要
以上、SESの契約期間に退職したらどうなるのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。









