SESの業界の問題について

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SES(システムエンジニアリングサービス)は、日本のIT業界では非常に一般的な契約形態の一つです。

一方で、「働き方」「契約と実態のズレ」「キャリア形成」などの観点から、構造的な課題を抱えやすい側面もあります。

本稿では、SESを一概に否定するのではなく

  • なぜ問題が起きやすいのか
  • どこで誤解や歪みが生まれやすいのか
  • 誰にとって、どのようなリスクがあるのか

を整理し、実務に即した形で解説します。

目次

そもそもSESとは何か

SESは多くの場合、準委任契約として締結されます。

準委任とは、「成果物の完成を保証する契約(請負)」ではなく、一定の業務を遂行すること自体に対して対価が支払われる契約形態です。

そのため、SESでは以下のような建付けになります。

  • 成果物の完成責任は基本的に負わない
  • 業務遂行について一定の裁量が受託側(SES企業側)にある
  • 発注側は、業務内容や目的を提示し、結果を確認する立場

ただし、実際の現場では「客先常駐」という働き方になることが多く、この契約上の建前と、現場での実態がズレやすい点が、さまざまな問題の出発点になります。

契約と実態のズレが生みやすい問題

SESで最も議論になりやすいのが、指揮命令関係の問題です。

準委任契約そのものは合法ですが、実態として、

  • 発注側がSESエンジニアに対して
    • 作業手順
    • 対応方法
    • 優先順位
    • 勤務態度や残業の指示

などを直接・継続的に指示している状態になると、法的には「労働者派遣」に近い実態と判断される可能性があります。

重要なのは、「発注側が一切関与してはいけない」わけではないという点です。

  • 業務目的の説明
  • 要件・仕様の提示
  • 成果や進捗の確認
  • 必要な情報提供

といった関与は、直ちに違法になるものではありません。

問題になるのは、「業務の遂行方法そのものを、発注側が直接コントロールしているかどうか」という点です。

この線引きが曖昧なまま運用されることで、現場に緊張感や不安が生まれやすくなります。

多重下請け構造が生みやすい歪み

SES業界では、元請企業から一次、二次、三次と企業が連なる多重下請け構造が見られることがあります。

この構造自体が直ちに違法というわけではありませんが、次のような問題が起きやすくなります。

  • 商流が深くなるほど、エンジニア本人に届く情報が断片的になる
  • 案件の背景や本来の目的が共有されにくい
  • 契約条件や評価基準が不透明になりやすい
  • トラブル発生時に、責任の所在が曖昧になる

結果として、現場のエンジニアは

  • 「何を期待されているのかわからない」
  • 「判断できる権限がないのに責任だけ重い」

という状態に置かれやすくなります。

キャリア形成が後回しになりやすい構造

SESでは、プロジェクト単位でのアサインが基本になるため、エンジニア個人の中長期的な育成設計が後回しになりやすい傾向があります。

典型的には、

  • 人手不足の現場へのスポット投入
  • 炎上案件の穴埋め要員
  • 長期間、特定の工程(テスト・運用など)に固定される

といったケースです。

これらは短期的には現場を支えますが、

  • 設計・要件定義など上流工程の経験が積みにくい
  • 技術スタックが断片化しやすい
  • 自分の市場価値を言語化しにくい

といった問題につながることがあります。

評価・報酬の透明性が低くなりやすい

SESでは、エンジニア本人が

  • 自分の契約単価
  • 単価と給与の関係
  • 評価がどのように決まっているか

を十分に把握できていないケースも少なくありません。

その結果、

  • 成長や成果が報酬にどう反映されるのかが見えない
  • 客先評価が人事評価に強く影響する
  • モチベーションの維持が難しくなる

といった不満が蓄積しやすくなります。

現場運用で起きやすい問題

SESの現場では、契約関係や組織の境界が多いため、運用面での課題も生まれやすくなります。

  • 権限が限定されており、改善提案が通りにくい
  • ドキュメント整備が後回しになる
  • 属人化が進みやすい
  • 引き継ぎコストが高くなる

これらは、エンジニア本人だけでなく、発注側にとっても品質・生産性の低下につながる可能性があります。

SESは「悪」ではないが、使い方が重要

ここまで課題を挙げてきましたが、SESという仕組み自体が悪いわけではありません。

  • 短期的にスキルギャップを埋めたい
  • 特定技術のスポット支援が必要
  • 事業初期で内製体制が整っていない

こうした場面では、SESは有効に機能します。

問題が起きやすいのは、

  • 役割や期待値が曖昧なまま人を入れる
  • 契約と実態の線引きを意識しない
  • 短期最適を繰り返し、長期視点を持たない

といった運用が続いた場合です。

まとめ

SES業界の問題は、個々の企業やエンジニアの資質というより、構造と運用の問題であることが多いです。

  • 契約内容と現場運用のズレ
  • 多重構造による情報・責任の分断
  • 人材を「リソース」として扱いやすい仕組み

これらを理解した上で、

  • エンジニアは自分のキャリアを主体的に設計する
  • SES企業は透明性と育成を意識する
  • 発注側は役割と責任を明確にする

という視点を持つことが、SESを健全に機能させるために不可欠です。

以上、SESの業界の問題についてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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